Kazutoshi Shimuta Exhibition
Kazutoshi Shimuta
2025.06.07 - 06.29
Kazutoshi Shimuta Exhibition
Kazutoshi Shimuta
2025.06.07 (sat) - 06.29 (sun)

トルソがほつれること

6個の筐体を積み上げてトルソを作る中で、何枚かの横たわるトルソ(地面に平たく置いた6個の筐体)をドローイングすると、なぜかすぐにほつれ始める。積み上げている時は構築的であったものが、平置きにした途端に瓦解するのだ。これは隠喩ではない。それについて合理的な説明をすることはできないし、共感を得られることでもないかもしれない。しかし、最近制作上の関心はいつもそのような得体の知れないものに向かってしまう。
「心の中に未知のものや非知のものが漂う空洞があることで、既知のものの世界を想像することが可能になる。前方にはまだ明らかになっていない科学的真実があり、後方には、この世界を生きた無数の人々の経験や創造が、もはや痕跡さえ残っていないものも含め、重く堆積している。これら堆積しているものの全体の重みが既知のものの世界にリアリティを与えてくれている。」これは私の制作の中心をなす考え方であるのだけれど、"トルソがほつれる"ことの不可解さといったことは、言わば別の次元の話にすぎない。しかし一月の展示でもそうだったように、このような関心事が制作の動機になってしまっていて、そこからなかなか離れられなくなってしまうのだ。

2025.05.01 紫牟田和俊


本展では、hide galleryでは初めて、1957年生まれの美術家・紫牟田和俊の作品をご紹介します。
紫牟田は1978年 東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻に入学。1986年には同大学大学院壁画第二研究室を卒業し、1991年 東京藝術大学大学院博士後期過程を修了。それに先立ち、1988年には統合前のドイツにてハンブルク美術学校に在籍し、ドイツの美術家フランツ・エアハルド・ヴァルター(Franz Erhard Walther)に師事。
これを境に、油画科に在籍しながらも絵画という枠組みに固執せず、(観念的な意味での)身体や物質、構造といった要素を横断する作品を発表してきた。

作品の主なシリーズとしては、1991年より多色あるいは単色で塗布された複数の板を壁面に対して規則的に斜めに設置する《pious colors》、2005年より、石膏で型取りされた小さな箱型の立体を並置した《TORSOHOUSE》、2022年より複数の筐体を重ねて、できた形によってトルソを作り、それを収納された状態でおく《Torso in the Box》など。
いずれも観念的なモティーフを抱いて身体・構造があらわれる、観念と物質が交差する表現に加えて、言語への関心や言葉あそび的な要素が見られます。

本展では、作家が最初期からとり組んできた「箱」の作品を起点に、ここ10年のあいだに興味を抱き、何度か油絵でトライしてきたという「瓦解していくイメージ」を主軸とする新作の絵画・立体作品を展示します。さらには、かつて グループ展「LVRFI」(2006 stuio ONO, 2008 T&S Gallery)で展示された作品もあわせて紹介予定です。

確固としたアイデンティティを築くことに無心するのではなく、その時々の関心に緩やかにうつろい、作品を制作してきた作家の活動をいまいちど見渡す契機となれば幸いです。
時間とともに展開してきた紫牟田氏の豊かな試みに、この機会にぜひご注目ください。

Artist Profile

紫牟田和俊

1957年 福岡県生まれ。 1982年 東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業 1986年 東京藝術大学大学院美術研究科壁画第二研究室終了 1988年 DAAD給費によりドイツに留学。ハンブルク美術学校にてフランツ・エアハルド・ヴァルター教授 (Prof. Franz Erhard Walther)に師事 1991年 東京藝術大学大学院美術研究科博士後期過程満期退学