「anasilan」
とても古い言葉で「風が止む」と言う意味があります。
そして現代英語の"silence"(沈黙)の語源の一つでもあります。
この言葉の意味合いとして単なる音の不在ではなく、動きや活動が止まり、静寂が訪れる様子を示唆しています。
作品の素材である流木や廃材は生命活動や本来の役割を終えて静かに朽ちていくものです。
私はそれらの素材に向き合い対話をする事で新たな意味と役割を与えたいと思っています。
日々の喧騒の中で一瞬、風が止み訪れた静けさで感じる感覚を静寂に満たされたこの空間で作品からも感じて欲しいと思います。
−水田 典寿
水田 典寿 (1977-) は、自身が海岸や解体現場から拾ってきた、流木や廃材に彫刻を施し作品として発表しています。
その時々で選択された素材の大きさや表面のテクスチャを手がかりに、
ある特定の動物や形象の再現を目的とするのではなく、制作の過程で自然に立ち上がってくるイメージに導かれるようにして造形が進められます。
そのイメージは、生き物の一部や羽、骨のような姿をもって表れますが、それらはあくまで素材が内包していた可能性に、
作家の目を通した「見立て」ないしは「見間違い」が重なって生まれたものです。
「古材」という、多くの時間と記憶が内在した素材と水田は日々をともに過ごし、ときには数年を経てようやくかたちが見出されることもあります。
風化や経年による痕跡が残る素材で制作された作品は、生と死のあいだを行き交うようなニュートラルな佇まいをもち、静謐でありながらも確かな引力を放ちます。
その存在は、鑑賞者の過ぎた時間や記憶と結びつきながら、展示空間にも拡張し、独特の緊張感と静けさをもたらします。
本展は、弊廊においては はじめてご紹介する作家と作品で、近年に開催された水田の展示のなかでも、比較的大きなサイズの作品を中心に構成いたします。
静謐さと確かな存在感をあわせもつその造形は、新たな年の始まりに、あらためて各々が抱く時間や記憶、ものの在りかたへと目を向けるきっかけとなるでしょう。
ぜひこの機会に、弊廊の空間にてご高覧ください。